本年度は,4ヶ年の研究計画の初年度にあたる。初年度ではまず,学生相談における大学コミュニティの機能や役割,大学構成員の位置づけや役割,大学生の自殺予防にかんする国内外の文献研究を行った。さらに,大学教職員を対象とした予備的調査研究を実施した。 調査研究では,まず,大学教職員を対象に学生の自殺予防講演会を実施し,事後アンケートを実施した。調査の目的は,大学教職員が大学生の自殺企図と向き合い自殺予防に取り組む際に抱く不安内容を把握し,不安を取り除くためにはどのようなサポートが必要なのかを探索的に検討することであった。調査は2014年8月に大学教職員(90名)を対象にアンケート形式で実施した。 その結果,まず「自殺企図学生と関わる不安」については81名が不安であると答えた。不安の内容を分析した結果,回答の多い順に『対応』(53.1%),『逆効果の危険性』(13.6%),『関与すること』(11.1%)とつづいた。いずれも自らが対応することへの不安として記されていた。次に「自殺企図学生と関わる際のサポート」については80名がサポートを求めると回答した。サポート内容を分析したところ,何が必要か分からない教職員が3割(『わからない等』(26.3%)『専門家にまかせたい』(5.0%)),一方で『対応の研修・知識』(20.0%)を求め支援者として成長したいと考える教職員が2割いることがわかった。また,『連携・協働』(30.0%)が最も多い回答であったことに加え『相談場所』(18.7%)を必要としている教職員がいることから,複数人で対応することを求めていることが示唆された。 以上のことから,日本の大学教職員は一人で対応を背負い込もうとしすぎて不安を募らせていることがわかった。今後,大学全体をコミュニティにする手立てを早急に検討する必要があることが示唆された
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