研究課題/領域番号 |
26780387
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉岡 正典 名古屋大学, 心の発達支援研究実践センター, 准教授 (70523314)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大学生 / 自殺予防 / レジリエンス / ソーシャルサポート |
研究実績の概要 |
本年度は、4カ年計画の2年目である。昨年度の文献研究および面接調査を踏まえて、今年度は、大学生の精神的健康、自殺に対するレジリエンス、友人・家族からのソーシャルサポートの授受について大学生を100名を対象とした質問紙調査を行った。因子分析の結果、自殺レジリエンスは、「内的因子」「情緒的安定性」「外的因子」の3因子構造であることが分かり、海外で使用されている自殺レジリエンス尺度は我が国の青年においても同じ因子構造になることが示唆された。尺度間の相関分析からは、レジリエンス3因子はいずれも自殺念慮の程度と負の相関関係がみられた。また、自殺レジリエンスとソーシャルサポートとの関連としては、レジリエンスの高い学生は、家族からのサポートの受領と友人へのサポート提供が高い傾向がみられた。これらのことから、学生の自殺予防において、自殺レジリエンス、すなわち、苦境に陥った際、自殺願望や自殺行動に傾かずに回復する力に着目することが有意義であること、そして大学生の自殺レジリエンスを育成するには家族と友人からのソーシャルサポートの授受体験を考慮に入れる必要があることが示唆された。自殺予防における大学ぐるみの支援体制を構築していくうえで、一般教職員が心配な学生に気づいた時,専門的支援につなげたい時に行う「日常的学生支援」、役割を担う教職員が自殺に関する具体的対応を必要とされる時に行う「制度化された学生支援」、カウンセラー等の専門家が学生の自殺防止活動を展開する「専門的学生支援」といった学生支援の3層モデル(日本学生相談学会)が参考になる。それを踏まえて、本研究からは、学生の家族及び友人(ピア)とのサポート関係が、精神的危機に対処するうえで重要となることが示唆された。 今後、学生支援における支援者の負担を加味し、学生が学生を支える活動であるピア・サポート活動及び家族との連携についても探求していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、大学生を対象とした質問紙調査を行い、一定数のデータを得て分析することができ、来年度に向けた課題や問題点も明らかとなった
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向性として、学生相談場面における自殺念慮や自殺行動を呈した学生の事例研究を行い、学生の心理的特徴、学業状況、友人関係、親子関係について分析する予定である。また、これまでの知見をもとに、ピアサポートにおけるサポーターの役割や負担感を調べ、バーンアウトに陥ることのない支援体制のあり方についても検討する予定である。
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