本年度は4カ年の研究計画の3年目であった。昨年度行った質問紙調査で明らかとなった自殺レジリエンスとソーシャル・サポートとの関連結果をもとに、本年度は、自殺問題を呈した学生相談事例(本人、家族、大学関係者)の詳細な分析を行った。その結果、自殺レジリエンスは周囲との関係に左右されること、事例では身近にいる教員が学生の自殺問題に気が付き専門機関である学生相談機関に来談するケースが多いこと、その際、学生対応に当たる教員自身の心理的負荷が過重であること等が示唆された。 また、本年度は、中学生を対象とした援助要請行動の質問紙調査を行った。その結果、生徒の援助行動は、生徒個人の要因だけではなく、生徒を取り巻く教室や学校の雰囲気が直接・間接的に影響を与えていることが示唆された。すなわち、学校が安心でき、信頼できる環境であれば、生徒が精神的苦境に陥った際、周囲に援助を求めようと意図する傾向が高いのである。 この結果について、来年度は大学生との比較を行い、大学生の自殺レジリエンスを高めるための対人環境の在り方、援助要請を受ける側の友人や教職員の負荷軽減、そして専門機関としてのケアのあり方について検討する予定である。
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