本年度は,4か年の研究計画の最終年度にあたる。これまでの研究結果,並びに学生相談分野における自殺予防研究をまとめ,学生相談の視点から見た大学生の自殺予防の在り方について検討し公表した。テーマは,「自殺問題の現状と特徴」、「自殺関連問題に関する研究」、「自殺問題を抱える学生への相談援助に関する研究」「大学コミュニティへの援助に関する研究」であり,主な内容は、大学生や大学に固有の自殺関連問題、危機的場面におけるカウンセラーの対応、自殺予防教育のありかた、大学教育システムと密接した見守り体制の構築、であった。 また,学生支援者養成に関するコミュニティモデルとして,教職員およびピアサポーターの役割とその負担の軽減について,具体的な事例をもとに検討した。加えて,教職員に対し,学生対応FDを実施したところ,より多くの教員から対応相談が学内の学生相談専門機関に寄せられた。これらの結果をもとに,学生対応に対する手引きを作成した。 さらに,大学間連携を視野に入れ,近隣大学の学生支援機関への視察を行い,学生相談体制,学内の自殺対策,教職員との連携について意見交換した。近隣大学との協議において,相談機関に来談する学生が増加していること,学生相談担当者だけでは人的資源が乏しいこと,教職員や大学執行部との連携のあり方などについて検討した。 最後に,本研究を総合的に振り返り,大学生の自殺予防に関する新たな方法論として,グループの力を活用すること,より深刻になる前の早期段階から,学生の本来的な成長力を引き出す支援が必要であることなどを明らかにし,今後の方向性について考察した
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