我が国は超高齢社会を迎え、年々増加する認知症高齢者に対する適切な支援/ケアが求められている中で、専門医の不足や診断に必要な情報の不足、さらに早期診断の難しさ等により、認知症の誤診がしばしば認められ、その後の当事者の生活における適切な支援/ケアが制限されている状況にある。そこで本研究では、認知症の鑑別診断に役立つ新しい診断ツールの開発を企図して、近年、中枢神経系のドパミン活動を反映する非侵襲性のマーカーである自発性瞬目の鑑別診断への利用可能性を検討した。 本研究では従来から用いられてきた瞬目率だけではなく、新たに開瞼時間(瞼を閉じた状態から開くまでに要する時間)、閉瞼時間(瞼を閉じるまでに要する時間)、瞬目の深さ(ベースラインから瞼が閉じるまでの波形の高さ)、心拍変動解析を瞬目変動(時系列に並んだ瞬きのピークを周波数解析を行うことによって算出された特性)等の各種パラメータを用いて、種々の認知機能との関連を検討することにより、特定の認知機能が低下する疾患特異的な自発性瞬目の特性を明らかにしようと試みた。被験者は60歳以上の高齢者および大学生・大学院生を中心とした若年者の両年代からデータを取得し、分析を行った。 その結果、両年代ともに、各種瞬目パラメータは、認知機能、特に前頭葉が基盤と考えられる遂行機能検査・課題の成績と関連が認められた。データ量が多かったため、終了後も引き続き、分析を行っている。
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