研究実績の概要 |
経絡テストによって測定される経絡経穴系の状態とストレス反応との関連性を明らかにする研究の第一歩として、頚部の経絡経穴系の状態の改善に伴うストレス反応の変化を実験的に検討した。参加者は、鍼灸を学ぶ専門学校生54名(男性34名、女性20名、平均で29.96歳)であった。ストレス反応としては、気分を日本語版Profile of Mood States短縮版(横山,2005)によって測定した。この尺度は、緊張-不安、抑うつ-落込み、怒り-敵意、活気、疲労、および混乱という6つの下位尺度から構成されており、過去1週間の気分を測定する。参加者を所属クラスごとに無作為に介入群(n=28)と統制群(n=26)に振り分けた。介入群の参加者には、朝、昼、夜にぞれぞれ以下のような指圧セッションを5回こなすように依頼した。1回のセッションでは、頚部に存在する6つの経穴を指で5秒間ずつ指圧するよう依頼した。統制群の参加者は、特に介入を受けなかった。介入後の時点で脱落者はいなかった。介入前から介入後の気分得点を引くことで気分の変化量を算出した。気分の変化量が大きいほど、気分が低下したことを示す。それぞれの気分の変化量を従属変数、介入前の気分水準と年齢を共変量、群を独立変数とする共分散分析を6通り行った。共分散分析の結果、緊張-不安[F(1, 50)=7.83, p<.01]、抑うつ-落込み[F(1, 50)=16.81, p<.01]、怒り-敵意[F(1, 50)=10.60, p<.01]、疲労[F(1, 50)=9.52, p<.01]、および混乱[F(1, 50)=7.97, p<.01]の変化量は、統制群と比較して、介入群の方が大きかった。他方、活気の変化量は介入群の方が小さかった[F(1, 50)=7.88, p<.01]。これらの結果から、頚部の経絡経穴系の状態の改善に伴ってストレス反応が緩和することが示された。 また、現在、経絡経穴系の状態と生理的ストレス反応との関連性を明らかにするための研究を進めている。
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