研究課題/領域番号 |
26780396
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中川 敦夫 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30338149)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | うつ病 / 治療抵抗性 / 認知行動療法 / 気質 / T&P日本語版 |
研究実績の概要 |
【1-認知行動療法への治療抵抗性に関連する心理・社会学的要素の検討】今年度はベースラインデータから予測因子の検討を行った。認知行動療法を施行されたうつ病患者39名を寛解群と非寛解群に分け、ベースラインにおいて差が認められる項目を検討したところ、回避性パーソナリティ障害の診断、QOL指標の一つであるSF-36における活力低下(疲労)が、非寛解との関連を認めた。疲労や回避の存在は、認知行動療法への治療抵抗に関連していることが示唆された。また、16 週間の認知行動療法の終了時点において残遺している心理的徴候の解析を進めている。
【2-認知行動療法の長期転帰:1年間追跡調査の開始】認知行動療法を終了後の長期転帰を研究するため、39名の認知行動療法終了後12ヶ月評価データの解析を行った。寛解率は、認知行動療法終了時点(16週)で42.5%(n=17)、3ヶ月評価で50.0%(n=20)、6ヶ月評価で70.0%(n=28)、12ヶ月評価で72.5%(n=29)であった。これは、薬物療法単独よりもどの時点においても寛解率は高かった。この成果は、Journal of Clinical Psychiatryに掲載されることになった。
【3-うつ病の気質に関する自記式評価尺度の開発ならびに信頼性・妥当性の検証】Gordon Parker教授が開発したTemperament and Personality Questionnaire (T&P)の日本語版を開発し、114例のうつ病患者を対象に信頼性・妥当性の検証を行った。その結果、T&P日本語版のtest-retest reliability, concurrent validityが示され、その成果をJournal of Affective Disorder誌に掲載された。T&Pの6か月転帰を現在までのところ45例まで追跡をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認知行動療法への治療抵抗性に関連する心理・社会学的要素の検討に関しては、データ収集が終わり、今年度は治療予測因子に注目し解析した。うつ病の気質に関する自記式評価尺度の開発ならびに信頼性・妥当性の検証に関して、Journal of Affective Disorder誌に公表した。認知行動療法の長期転帰に関しては39名の追跡し、その成果はJournal of Clinical Psychiatry誌にアクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね研究計画は順調に進展している。このため、交付申請書に記載した「研究の目的」「研究実施計画」に照らし最終年度の計画を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品(事務用品)費としての使用が当初計画より抑えられたため、使用金額に変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた最終年度の学会発表を増やし、一部は消耗品費に使用する。
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