研究実績の概要 |
うつ病治療においてうつ症状がほぼ消失する寛解に至らない「治療抵抗性」を認める者は治療を受けた者の7割に上り、より効果的な治療法の確立が望まれる。うつ病の治療抵抗性に関して、これまでの研究においては薬理学を含む生物学的観点からの検討がいくつもなされてきているが、妥当な科学的方法論にもとづき認知行動療法に焦点をあてた研究はほとんどない。そこで、本研究は、1)認知行動療法に対する治療抵抗性に関連する心理・社会学的要素や特性、残遺する心理的徴候を明らかにする、2)認知行動療法の長期転帰(1年追跡)を明らかにする、3)認知行動療法が主な治療対象とする非メランコリーうつ病の気質・パーソナリティー傾向に関する自記式評価尺度の開発ならびに信頼性・妥当性の検証をすることを目的に実施した。 具体的には、 認知行動療法の終了時点における治療反応との関連を解析し、治療抵抗性の予測因子を検討した結果、回避性パーソナリティ障害とBDI-IIとHAMD-17のdiscrepancyとの関連が示された。また、うつ病患者に対して認知行動療法終了後の寛解率は、介入終了時点では42.5%、6ヶ月後は70.0%、12ヶ月後は72.5%であった。Gordon Parker教授が開発したTemperament and Personality Questionnaire (T&P)の日本語版を作成し、信頼性・妥当性の検証研究を行い、T&P日本語版のtest-retest reliability, concurrent validityが示された。さらに、治療6ヶ月後に寛解に至っていない患者は、人に内面を見せないことが多いことが明らかになった。
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