研究課題/領域番号 |
26780397
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
金築 智美 東京電機大学, 工学部, 准教授 (40468971)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 特性怒り / ロールレタリング / 怒り対象焦点型 / 受容他者焦点型 / 組み合わせ効果 / 継続的施行 |
研究実績の概要 |
平成28年度は,怒り対象焦点型RL(以下,怒り対象RL)群が受容他者焦点型RL(以下,受容他者RL)群よりも怒りの変容に優れた効果を発揮した点を踏まえ(平成27年度における結果),怒り対象RL群単独の場合と2つの異なる想定する他者(怒り対象RLと受容他者RL)を組み合わせた場合で効果がどの程度異なるかを統制群との比較を通して,調べることを目的とした。なお,事前に,東京電機大学のヒト生命倫理審査委員会の承認を得て,本研究を実施した。 実験の概要は以下の通りであった。まず,特性怒りの高い大学生を抽出し,実験の参加を依頼した。承諾が得られた実験参加者を,①4回の怒り対象RLのみ行うRL群(以下,怒り対象RL群)8名,②怒り対象RL2回と受容他者RL2回を組み合わせたRL群(以下,組み合わせRL群)8名,③統制群10名の3つに分類し,個別に実験を実施した。本来ならば,受容他者単独のRL群も比較対象とする予定だったが,実験者の都合により実験が行えなかったことから,平成28年度は上述した3つの群における効果を比較,検証した。効果測定は,介入前後と2週間後のフォローアップで行った。使用した主な尺度は,①特性怒り,②怒りの反復思考,③怒りの反事実思考,④状態怒り,⑤怒り自己陳述尺度であった。なお,フォローアップ時まで測定した尺度は,①から③であった。収集されたデータを,2要因(介入×測定段階)の分散分析を行った。その結果,怒り対象RL群において,特性怒りがポストとフォローアップの間で有意に低減していた。状態怒りと怒り自己陳述は,両RL群が統制群と比較して,介入前後で有意に低減していた。 以上から,組み合わせRL群も効果が一部認められたことに加え,前年度に得られた知見を踏まえると,怒りを感じた相手に対してRLを行うことが,怒りの変容には適していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに,RLを行う際に想定する他者の違いが怒り変容の効果に影響をもたらすことが示唆される結果が得られており,前年度と類似した結果が得られたことから,怒り変容を目的としたRLのプログラムが完成しつつある。ただし,受容他者焦点型RL群の効果もさらに調べる必要性があることから,今年度は実験参加者を募って,データを追加し,その効果を追求していくことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,平成28年度で実証された成果を,日本心理学会及びアメリカ認知行動療法学会にて発表を予定している。また,28年度に得られた介入研究の成果を,学術雑誌に投稿する準備を行うことを予定している。さらに,前年度得られなかった受容他者焦点型RL群の追加データを収集することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
親の看病及び病死に伴い,実験を実施するための十分な時間を確保することが出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
残り一群のデータの収集を予定しているため,実験参加者への謝礼に充てる予定である。また,研究成果の発表のため,国内外の学会参加のための旅費に充てることを考えている。
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