研究課題
平成27年度の研究の目的は,社交不安障害患者に対するCCBTプログラムの効果検討を実施する前の,予備的な検討を行うことであった。第一に,社交不安における認知機能の明らかにするために,質問紙調査を行った。具体的には,社交不安症状と,注意制御,抑うつ症状,不安感受性の関係性を検討した。これらの要因は社交不安に影響を及ぼすことが認められ,注意制御や抑うつ症状は特に強い影響が認められたことから,測定指標として取り入れることの必要性が示唆された。第二に,一般企業の社会人を対象に,予備的なCCBTプログラムの検討を行った。このプログラムは,専門家のガイドなしでインターネットを経由して個人がテキストと動画から心理教育的な内容をもとに,メンタルヘルスの理解と認知行動療法的アプローチを進めるものである。分析の結果,不安―緊張に対してWebベースでの認知行動療法プログラムが効果を示すことが認められた。そのため,不安に関する問題は,専門家のガイドなしでPCからWebプログラムを受けることで効果の上がることが確認された。第三に,社交不安に関するCCBTプログラムの予備的検討を行った。現在10名程度が8回構成のCCBTプログラムの実施を終えており,平成28年度も継続して参加者を募り検討を進める予定である。具体的には,社交不安症状,抑うつ症状,自動思考などの要素において低減が認められている。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は,大学生を対象とした社交不安症状に対するCCBTプログラムの効果検討を行うことが主たる目的であった。これらの検討については,予定通り進められており,今後予定している計画を進展させることで,目的が果たされると考えられる。
平成28年度においては,これまでの大学生を対象としたCCBTの効果検討の実施を進めていくことに加え,社交不安障害患者を対象としたCCBTプログラムの効果検討についても実施を進める。なお,比較対照群として設定をする個人認知行動療法のグループに対するプログラム実施についても,平成28年度に並行して実施を進めていく。
研究発表に関する学会の開催年度・時期の都合により平成28年度に支出があることや,研究遂行における事務用品費・研究参加者への謝金の支払いなどが翌年度に支出することを予定しているものがあり,使用額に予定とのずれが生じた。
研究成果の公表のため,学会参加を行い,旅費や大会参加費を計上する予定であるほか,研究参加者への謝金や論文執筆における英文校閲費などを支出することを計画している。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
International Journal of Psychology and Psychological Therapy
巻: 15 ページ: 425-431
ストレス科学研究
巻: 30 ページ: 157-161