本年度は二つの研究を実施した。一つは、うつ病へのメンタルヘルスリテラシーに影響する個人要因を明らかにすることを目的としている。一般成人を対象とし、アンケート形式の調査を実施した。調査では、これまでの研究で尋ねたうつ病に対する症状への認知、原因認知、援助の有効性の認知および、援助要請意図/援助要請を勧める意図に加え、精神疾患に対する信念を尋ねた。その結果、精神疾患に対する信念は、うつ病に対する様々な認知に影響しており、特に精神疾患を「忍耐不足」ととらえる傾向が、援助の有効性や援助要請意図/援助要請を勧める意図と負の関連を示した。そのため、援助要請促進を目指す介入においては、こうした視点を扱うことの重要性が示唆された。 もう一つの研究では、これまでの研究結果を踏まえ、大学生を対象とした援助要請の介入プログラムを実施した。またその際、従来の研究において指摘されていた研究計画上の課題を克服すべく、RCTによる比較研究を実施した。また介入の内容としては、これまで用いてきた1時間1回のプログラムとは異なり、今回は1時間2回を一つのセットとして、プログラムを構築した。本プログラムでは新たに、抑うつ症状等に関するより詳細な情報提供を行い、特に研究1で明らかになった精神疾患に対する信念にも焦点を当てた。その結果、介入群において、援助要請意図が有意に上昇し、その効果は4週間後も維持されていた。以上から、本研究が目的とする抑うつにおける援助要請の促進について、一定の成果が得られたといえる。
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