3年度目(最終年度)となる今年は、1つの調査研究、1つの介入研究を行った。調査研究では、前年度に作成した「エイズ相談利用の利益性・障がい性認知尺度」の信頼性・妥当性の検討を行った。インターネットの調査会社が保有するマスターサンプル(7630名)を対象として、アンケートを配信し、1098名が回答した。回答が全て同じサンプルをカットし,日本の同世代における人口分布の割合に応じて無作為にサンプルカットをし、成人男女690名(男性345名,女性345名)の回答を解析の対象とした。調査では、上記尺度に加え、「エイズ相談の存在認知」「利用経験」を尋ね、得られたデータに基づいて、変数間の関係を多変量解析によって検討した。それらの成果は、関連学会で発表し、その後、学術論文としてまとめ、査読のある学会雑誌に投稿・審査中である。結果の概要としては、作成した尺度は、一定の信頼性と妥当性を有するものであった。さらに、同上サンプルを対象として、2週間後に再調査を行い、尺度の時間的安定性についても検討し、概ね仮説通りの結果を得た。 1つの介入研究では、1年目、2年目の調査で収集した、実際のエイズ相談「利用者」の、エイズ相談利用で獲得した「利益」を広報資料として用い、エイズ相談への被援助志向性と、現在の援助要請意図の向上と、「エイズ相談利用の利益性・障がい性認知」の変化を検証した。解析の結果、概ね、仮説通りの結果を得た。現在、査読のある雑誌への論文投稿をすべく執筆中である。 本研究は、エイズ相談利用を促進するための啓発メッセージ(介入方法の開発と評価)のための研究であって、研究計画立案時に期待した成果と、ほぼ同等の結果が得られたと考えられた。
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