今年度は主観的ウェルビーイング(SWB)次元の高低と精神症状次元の高低とを組み合わせた4群でストレス反応の推移が異なるかを検証した。さらに、SWBとは異なりつつも近似した概念である心理的ウェルビーイング(PWB)、および、SWBとPWBの上位概念として設定した自覚的なウェルビーイングについても、精神症状次元と組み合わせた4群での比較検証を行った。 群×時点の二要因分散分析を行ったところ、ウェルビーイングの自覚や精神症状次元の在り様に関わらず、ストレスの心理生物学的反応が誘発されたことを確認した。しかしながら同時に、主観的感情や心拍の推移について、いずれのウェルビーイングの側面を組み合わせた場合でも交互作用効果を認め、その反応性の強弱には群ごとの異なりがあることを実証した。 主な交互作用として、精神症状次元と自覚的ウェルビーイング次元の双方が高い群で、 誘発されたネガティブ感情が回復しにくいことを確認した。また両次元ともに良好な群では、課題前後や回復期のネガティブ感情の変動が大きかった。二次元ともに良好であることにより、ストレス状況下での心理的反応に対する適切な自覚が促されやすいことを示唆した。 PWB側面の高低に関わらず精神症状次元の低さが課題後の高いネガティブ感情に関わることも確認した。また回復過程においては、精神症状次元の高低に関わらずPWB次元が高いと顕著に変化した。心理的反応の誘発を適切に自覚するためには精神症状の少なさが、回復のためにはPWBの高さがそれぞれ機能していることを示唆した。さらにHF値に関して、両次元が矛盾している群での一貫した低さと、両次元ともに良好な群のみでの課題15分後から30分後にかけたさらなる上昇を確認した。生物学的リラックス状態という観点において、精神的健康の二次元に矛盾があると困難であり、両次元良好であることで促進されることを示唆できた。
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