研究課題
本年度は,既存データの再解析と新たな調査を実施した。既存データの再解析では,がんの終末期の治療選択における遺族の後悔についての質的なデータを用いて(37名),後悔が解消した遺族と後悔が解消しない(もしくは後から後悔が生まれる)遺族の後悔制御方略の違いを明らかにすることを目的として行った。先行研究による決定焦点、選択肢焦点、感情焦点のそれぞれの対処方略に遺族の具体的に対処行動を分類し,後悔の解消に特徴的なパターンを示した。後悔が解消する遺族は,意思決定時には決定焦点型後悔制御方略を用いる傾向が強く,意思決定後には感情焦点型後悔制御方略を用いる傾向が強かった。それに対して,後悔が解消しない遺族は,意思決定時には特徴的なパターンがみられず個人差があり,意思決定後には選択肢焦点型と感情焦点型の後悔制御方略を用いる傾向が強かった。また,欧米の研究ではみられなかった「お任せ的意思決定」や「運命論的明らめ」といった我が国特有の文化背景をもつ対処方略の有効性が示唆された。一方,新たな調査を実施し高齢者夫婦のペアデータ(79組)を収集し,夫婦の日常のコミュニケーションが,老後やどちらかが意思決定できなくなった場合の話をすることや将来の不安やコントロール感とどのような関連があるのか検討した。その結果,日常の会話における感情の扱い方によって4つのタイプに分類することができた。4つのタイプのうち最も,主観的満足度が高く,将来の不安が低く,コントロール感が高かったのは,ポジティブな感情やネガティブな感情ともに多く伝えあう夫婦であった。この傾向は,特に男性において顕著にみられた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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