研究課題/領域番号 |
26780408
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
吉田 沙蘭 独立行政法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 心理療法士 (70636331)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 小児がん / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
近年、成人のがん患者に対し、終末期における治療や療養に関わる意思決定を視野にいれ、病状や予後「、治療目標等について、早期から話し合いを行うことの重要性が指摘されている。しかし小児がん患児に対する、終末期を視野に入れた病状説明(End-of-Life discussion; 以下EOLd)に関する研究は非常に少ない。そこで研究者はこれまで、小児がん患児の遺族、小児がん診療に携わる医療者、成人がん患者の遺族を対象とし、EOLdに関わる実証的研究を重ねてきた。 平成26年度は、前年に実施した小児科医を対象とした質問紙調査の解析および論文の執筆を行った。また、国際サイコオンコロジーに併催された小児がん患児とのコミュニケーションに関するワークショップに参加し、患児とのEOLdの実践について欧米諸国の研究者、臨床家と意見交換を行った。その結果、米国では低年齢であっても患児とのEOLdが普及していること、またEOLdを基盤としたAdvance Care Planningも進んでおり、終末期の療養や治療について出来る限り患児本人の意向を反映するよう取り組まれていることが明らかとなった。一方、国内の小児科医を対象とした質問紙調査では、患児が高校生であってもEOLdを実施している割合は2割に届かず、依然として病名や再発を伝えられていない患児も少なくないことが明らかとなった。以上のことから、我が国ではEOLdに先立ち、まずは病名や病状説明の促進から行うことが求められているのではないかと考えられた。 そこで、平成27年度に小児がんのサバイバーを対象に、病名を含む病状説明について本人の意向を明らかにするための面接調査を実施することとし、関係者で実施に向けた会議を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は小児がん患児の遺族を対象とした調査の結果を元に、小児がん患児に対するEOLdに焦点をしぼって研究を進める予定としていた。しかし、医療者調査の結果から、現在我が国ではEOLdの前の段階の病名や再発・転移の告知さえもまだ十分には行われておらず、EOLdに焦点を当てることは時期尚早であると判断された。そこで計画全体を練り直し、病名告知等を含むより広い意味での患児とのコミュニケーションを取り扱うこととし、調査計画の見直しを行った。それによりやや進行に遅れがあるが、より現場の実情に即した研究が可能になるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年度中に関係者と行った検討内容をふまえ、小児がんサバイバーを対象とした面接調査を行う。当初、研究者の所属施設を含む数施設のみでリクルートを行う計画としていたが、小児がんサバイバーは成人と比較して母数が少ないこと、病院や地域により病状説明の方針が大きく異なることなどの事情から、全国の小児がん診療を行う病院から協力を募り、リクルートを行うすることとした。現在協力施設を募る方法について、日本小児血液・がん学会の助言を得ながら検討を進めている。 病状説明をはじめとしたコミュニケーションは、米国小児科学会がInformed Assentを取得すべき年齢として設定している12歳頃より重要性が高まると考えられるため、面接調査の対象者は12歳〜20歳の間にがんに罹患した経験のあるサバイバーと設定する。また、倫理的観点から、調査時年齢が20歳以上の者のみを対象とする予定である。 面接調査の内容としては主に、①過去に受けた病状説明の経験、②そのことに対する評価、③仮に病状が進行した場合のEOLdにたいする意向、および④その理由とする。面接調査の結果を元に、平成27年度後半、ないしは平成28年度に、コミュニケーションに対する患児の意向に関する全国質問紙調査を実施する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定どおりに予算が執行された。残額は誤差範囲内と考える。
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次年度使用額の使用計画 |
サバイバーを対象とした面接調査を実施する。繰り越し分を含む平成27年度の予算は、協力施設のリクルートのための書類送付、面接のための交通費、対象者への謝礼、面接内容のテープ起こしに主にしようする予定である。
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