近年、成人のがん患者に対し、終末期における治療や療養に関わる意思決定を視野に入れ、病状や予後、治療目標等について、早期から話し合いを行うことの重要性が指摘されている。しかし、小児がん患児に対する、終末期を視野に入れた病状説明(End-of-Life discussion;以下EOLd)に関する研究は少ない。そこで本研究課題では、小児がん領域におけるEOLdに関する実証的研究を重ねてきた。 まず平成26年度には小児科医を対象としたEOLdの実施状況について実態調査を行った。その結果、高校生に対してはEOLdの必要性についてある程度「EOLdすべき」という意見の一致がみられている一方で、中学生以下についてはその是非をめぐり専門家の間でも意見が分かれる実情が明らかになった。 そこで平成27年度から平成28年度にかけ、思春期および若年成人(Adolescent and Young Adult;以下AYA)世代に焦点を当て、 EOLdに対する患者の意向を明らかにするための面接調査を行った。対象は、15歳から29歳までの間にがんに罹患し、現在20歳以上の患者15名であった。その結果、EOLdをしたい理由としては「治療選択のために必要な情報である」「残された時間の使い方を考えたい」といった内容が、EOLdをしたくない理由としては「希望がもてなくなる」「言われなくてもわかる」といった内容が抽出された。 平成29年度には、インタビューで得られたデータについて、AYA世代のがん治療に従事する医療者を対象として、カテゴリーの生成および妥当性の担保のためのフォーカスグループを実施した。その結果、EOLdに対する意向に関連する価値観として「十分な情報提供がなされないことは医師との信頼関係に関わる」「自分の置かれている状況を正確に把握したい」「十分に状況を理解して治療選択を行いたい」などの内容が抽出された。
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