本研究では、医療機関において心理職が自殺対策を含めた業務を他の職種と協働で行う際に必要なスキルを明らかにし、そのスキルを評価するための「心理職協働スキル評価尺度」を開発することを目的とした。 1年目は系統的レビューを行い、医療領域における心理職の協働スキルを評価する尺度は皆無であることを明らかにした。次に心理職が他の医療職と働く際に必要とされる知識やスキルを探索した定性的研究を参照して、尺度の構成概念と項目案を検討した。そして、尺度項目を選定するために、医療機関において他の職種と協働している臨床心理士10名、臨床心理士と協働している医師5名、看護師5名、ソーシャルワーカー5名に協力を得て、尺度項目案の表現修正、類似した項目の統合、新たな項目の考案を行った。その結果、「医療領域で必要とされる知識」「心理職としての専門性を活用するスキル」「多職種チームへ働きかけるスキル」「適切に情報提供するスキル」「コミュニケーションスキル」「地域連携スキル」「研究スキル」「セルフマネジメントスキル」の8カテゴリー、計58項目を選定した。 2年目は58項目の内容的妥当性を確認するために、各項目が“他の職種と協働するために必要なスキル”に関係しているかどうかを項目選定作業に協力した25名が4段階で評定した。関係があると答えた者の割合が80%以上の項目を選定した結果、計51項目が残り、これを尺度原案とした。次に項目分析を行うため、医療機関において他の職種と協働している臨床心理士52名を対象にして尺度原案を用いた質問紙調査を実施した。そして、各項目の得点分布の偏り等を確認して項目を削除し「心理職協働スキル評価尺度」暫定版とした。 本研究により、心理職が他の医療職と協働する際に必要なスキルが明らかとなり、そのスキルを評価する尺度が開発された。今後、実態調査や教育プログラム効果測定のツールとして本尺度が活用されることが期待される。
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