小児がんのひとつである骨肉種の治療で用いられるメソトレキセートは、患児の認知機能に影響を及ぼすかもしれないと懸念されている。同じようにメソトレキセートを用いる白血病では、認知機能の軽微な低下を示す研究結果もある。しかし、骨肉腫の発症例数自体が少ないため、世界的にみても研究はほとんど進んでいない。つまり、骨肉腫に関してはメソトレキセートの影響はいまだ不明のままである。 そこで本研究では、骨肉腫の治療を受ける患児および治療を受けた患児の認知機能と自己効力感の変化を追跡調査する。小児がん全体の発症年齢はおよそ未就学から小学校低学年の児童が多い。しかし、骨肉腫は小学校高学年から中学生にかけて多く発症するため、本人の心理的な変化も慎重に調べる必要がある。命が助かった後の生活の質をどのように捉えるかは、本人が社会の中で適応的に生活していけるという自己効力感の影響を受けると考えられるからである。 本研究に関して、単一施設での新規症例の登録が始まった。肢の手術を受けている場合、歩きかたに偏りが見られても、椅子に座って検査を試行する分には何ら問題が生じない。筆記の検査においても、指先の末梢神経に問題がないため、補助なく回答が可能である。つまり、学校の授業も含めた座位における作業の場合、患児はあまり支障を感じることなく作業を進めることができている。すなわち、小児がんの治療後の障害を検討するときに、残った障害が目に見えるか否かも重要だが、残る場所が上半身か下半身かも社会適応に差を生むと思われる。
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