研究課題/領域番号 |
26780416
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松下 戦具 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (00528367)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 錯視 / 残像 / 運動知覚 |
研究実績の概要 |
「静止画が動いて見える錯視」の一種であるフレーザー・ウィルコックス錯視族は,視知覚研究における格好の研究材料であるにもかかわらず,その錯視を生起させる知覚メカニズムには不明な点が依然多い。本申請はその錯視メカニズム解明のために下位の問題点を3つ挙げて研究を進めている。 本年度(初年度)はそれらのうち,この錯視が「眼球運動に伴う網膜像の運動で生じるのか」という点を中心に研究した(先行研究ではこの錯視が運動を知覚させるメカニズムの説としていくつか提唱されており、眼球運動に伴う網膜像運動もそのうちの一つである)。この問題を調べるために、錯視図形の残像上に運動が知覚されるかを調べた。もし残像に運動が知覚されれば、必ずしも網膜像の運動は必要ないことになる(なぜなら残像は網膜上で固定しているためである)。研究の結果、残像にも錯視的運動が知覚されることが明らかになり、この錯視には必ずしも網膜像の運動は必要でないことが示された。つまり、この錯視は単に網膜像の運動が増幅されて起こっているのではないことが示された。さらに残像における錯視的運動の方向は、背景領域とのコントラストに依存することまでが明らかにされた。その他、現在継続中の研究(未発表)ではあるが、残像の錯視的運動における色の効果も徐々に明らかになりつつある。網膜上では全く運動がないにもかかわらず運動が知覚されるこの現象は、人間の生体内でどのように運動信号が発生するのかを調べる重要な手がかりになりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に行う研究として計画調書に掲載した項目のうち1つに関しては、その研究成果が対外的には発表されていない。その理由は、類似の研究を他の研究者が先に発表し、新規性が減少したためである(次の展開へ向けて研究を続行中)。しかしながらその代わりに、他の研究内容では計画以上の進展が見られるため、差引して概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究調書に記載したとおり、この錯視と視野(中心視・周辺視)との関係を明らかにしてゆく。それに加え初年度に引き続き残像における錯視的運動の特性(運動の強さや色の効果)を明らかにしてゆく。 研究成果の対外的な発表に関しては、初年度は国内学会および研究会にとどまったが、今後は国際学会および国際誌で発表できる水準に引き上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が12万円程度発生したが、そのうちの10万円は前倒申請した分である。前倒申請を行った理由は、当初の予定よりも早くに論文を投稿する可能性が発生し、その論文投稿・掲載費を確保するためであった。しかし当該年度内には投稿されなかったため、次年度使用額となった。残りの約2万円は、実験参加者への謝金に当てる分であった。しかし実験で効率よく良好な結果が得られ、実験参加者の数が少なく済んだために次年度使用分となった。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの研究費は、当初の予定に沿い、論文投稿・掲載費、および実験参加者への人件費として使用する計画である。
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