研究課題/領域番号 |
26780417
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
大神田 麻子 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (90725996)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肯定バイアス / 言語コミュニケーション / 質問理解 |
研究実績の概要 |
本研究計画では就学前児のコミュニケーション能力を明らかにするための一環として、就学前児がさまざまな「はい」「いいえ」で答える質問(以下、YN質問)に反応バイアス(回答の偏り)を示すかどうか検討している。本年度では、第一に、前年度に引き続き、子どもが公平な分配、不公平な分配についてのYN質問に対し肯定バイアスを示すかどうかについて調べる研究を行い、予定通りの人数のデータを収集して完成させた。年少児はこれまでの研究において、様々なYN質問に肯定バイアスを示すことが明らかにされてきた。しかしこれらの質問は子どもの利益に無関係の質問であり、利益に関わるような質問については未検討であった。そして本研究は、自身の利益に関わる場合でも、年少児は変わらず強い肯定バイアスを示すことを明らかにした。現在、この結果について国際学術雑誌に投稿するため、論文にまとめている。 第二に、社会的圧力を強めた場合に子どもが肯定バイアスを示すかどうかについての検討のうち、誘導質問に関する子どもの回答傾向について調べた。子どもにAとBである曖昧な刺激(例えばシマウマ柄のキリン)を見せ、「私はこれはシマウマだと思うけど、これはシマウマ?」「私はこれはキリンだと思うけど、これはキリン?」などと聞く実験を行った。幾つか同様の刺激を準備したが、シマウマ柄のキリンについては、子どもにとっては形よりも色(パターン)の方が印象が強かったようで、この刺激についてのみ、「シマウマだ」と答える回答の偏り(否定バイアス)が見られた。そこで大人を対象に再度、予備調査を行い、現在、別の刺激を準備し、追加実験を行おうとしているところである。 第三に、日本とハンガリーの子どものYN質問に対する回答の違い(主に「わからない」反応についての分析)についての検討は、前年度に引き続き、共同研究者と議論をした上で、国際学術雑誌に投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題の進捗状況は概ね順調である。予定していた実験のうち、いくつかの実験のデータの収集を終了させた。一方、上述したように、実験開始前の大人を対象とした予備調査の結果を元に、AとBである刺激として作成したものが、子どもにとってはAであった、というものが見つかった(シマウマキリン)。大人と子どもの認知は時にずれることもあるため、現在、新たな刺激を作成し、追加の実験を行う準備をしているところである。刺激を変更し、実験が無事に意図する通りに遂行できれば、この件は問題というよりは、新たな研究の萌芽になりうると考えている。その他の研究についてみ概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、一部、想定外の子どもの反応が見られたが、この件については刺激を修正し、AとBである曖昧な刺激を改めて作成し、次年度に追加実験を行う予定である。また、社会的圧力を軽減した場合のYN質問に対する回答傾向の検討については、当初はハンドパペットを質問者として使用する予定であったが、すでに同様の研究が行われていたため、現在、ハンガリーの研究者と共同で、ハンドパペット以外の質問者をCGで作成し、予備実験を行っている。今後、日本の子どもとの文化差も含め、この県について検討していく予定である。 また、本研究計画の残りの実験として、子どもが礼儀のために肯定バイアスを示すか、という課題についても次年度に検討予定で、現在、実験の準備を行っている。 最後に、子どもが「わからない」という反応についてどのように思っているかについても、次年度に検討する予定である。
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