研究実績の概要 |
神経伝達物質の一つであるセロトニンは衝動性を生み出す神経基盤の中で重要な役割を担うことが示唆されているが、現在までその機能における統一的な見解は得られていない。申請者らの先行研究において、遅延報酬待機行動中マウスの背側縫線核をオプトジェネティクスの手法を用いてセロトニン神経選択的に刺激すると、報酬待機行動が促進されるという結果を得た(Miyazaki et al., 2014)。本研究は背側縫線核セロトニン神経が強く投射している脳部位に注目し、内側前頭前野、前頭眼窩野、および側坐核のいずれかが特に遅延報酬待機行動の促進に重要であるという仮説を立て、その検証を行う。 本研究を遂行するにあたり、遅延報酬待機行動におけるセロトニン神経光刺激の影響はどのような状況でより効力を発揮するのかを明確にする必要がある。そのため遅延報酬獲得課題において報酬の確率および量を変化させた実験を平成26年度に引き続き平成27年度に実施した。 実験では遅延報酬時間を3秒とし、①報酬確率75%で1試行につき1個の餌(報酬75%, エサ1個)、②、①報酬確率75%で1試行につき2個の餌(報酬75%, エサ2個)、③報酬確率50%で1試行につき1個の餌(報酬50%, エサ1個)、④報酬確率50%で1試行につき3個の餌(報酬50%, エサ3個)、⑤報酬確率25%で1試行につき1個の餌(報酬25%, エサ1個)、⑥報酬確率25%で1試行につき3個の餌(報酬25%, エサ3個)、の6条件で実験を行った。その結果、セロトニン神経活性化による報酬待機行動の促進効果は、将来もらえる報酬の確率に依存し、量には依存しないことが明らかになった。 また、背側縫線核セロトニン神経の投射部位の光刺激実験にも平成27年度から着手した。
|