ルソーの女性教育論再考―宗教的世界観との連続性に着目して―

2015 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 26780426
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 田中 マリア 筑波大学, 人間系, 助教 (20434425)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: ルソー / 教育思想 / 道徳教育 / 宗教

研究実績の概要

本研究の目的は、近代教育思想の祖と評されるルソー（J.J.Rousseau,1712-1778）の教育思想について、とりわけ、これまで概して、近代啓蒙主義的ヒューマニズムの流れの中で合理主義的に解釈されることの多かった『エミール』を、宗教的世界観との連続性に着目しつつ全体を捉え直したとき、従来、フェミニズム論との関係において批判されることの多かったルソーの女性教育論がいかなる教育的意義を有していたのか改めて考察することである。
「研究実施計画」に示した通り、平成２７年度は、前年度に行った予備的検討のほかに、本研究のテーマとの関連で押さえておく必要のある周辺事項、すなわち、ルソーの女性論に少なからぬ影響を及ぼしているヴァラン夫人をはじめとするルソーの周囲の女性たちの存在に関する理解・把握に努めた。具体的には、ルソーに影響を与えたであろう女性たちに関する情報収集や資料分析を中心に作業を進めた。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成２７年度は、北アメリカのルソー学会がアダム・スミス学会と共催でシンポジウムを企画していたため、そこに参加し、共感性やケア的文脈における道徳論などに関する情報収集・意見交換などを行う計画であったが、日程の調整がつかず出席することができなかった。そのため、情報のフォローや、検討すべき資料等について把握するのに手間取ってしまった。ただし、情報は随時フォローしており、研究全体の進捗に甚大な遅れをきたす状況ではない。

今後の研究の推進方策

今後は、研究の最終年度となるため、二年間の成果を踏まえて、ルソーの女性論の捉え直しや『エミール』第５編前半部分における女性教育論の意義に関する再検討、総括とそこで得られた具体的な知見を研究成果として積極的に発表、投稿していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

平成２７年度に出席する予定であったシンポジウムへ参加できなかったため、計画段階における旅費および謝金の使用予定額とのずれが生じてしまった。

次年度使用額の使用計画

シンポジウムの成果は文献や資料集として随時、発表されていくため、その収集のための物品費にまわすとともに、平成２８年度に改めて渡航し、シンポジウムの様子や成果などについて関係者からの情報収集に努める予定である。