本研究は、ルソーの教育思想について、とりわけ、これまで概して、フェミニズム論やジェンダー論との関係において批判されることの多かったルソーの女性教育論を再考した。ルソーの宗教観や倫理観の文脈に即して再考した結果、それが単なる男性優位論とは一線を画するいわばケア的なもの、それはまさに「女性の道徳的卓越性」について言及した、「もうひとつの声」として読まれるべきものであることを明らかにした。ただし、それは必ずしも女性をケア的な存在と規定し、固定的な性役割の枠でとらえているものでもないこと、性に対するルソーのとらえ方はもっと複雑で多様なものであった可能性が高いことなどについても言及した。
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