平成28年度の研究成果としてはまず、その前年度より執筆を進めていた拙稿「授業の秩序化実践と『学級』の概念」を収めた酒井泰斗ら編『概念分析の社会学2――実践の社会的論理』(ナカニシヤ出版)が4月に刊行されたことが挙げられる。また当該著作をめぐっては、例えば2016年度エスノメソドロジー・会話分析研究会秋の研究大会における書評セッション(http://emca.jp/meeting.php#conf)で取り上げていただくなど、複数箇所で書評を受ける機会にめぐまれた。 ところで、上記著作は本研究プロジェクトの目的である「[1]知識のありかたに応じて変化する・[2]『学級』という場に固有な教育実践の編成技法を明らかにすること」のうち、特に[2]の側面に重点を置いて研究を進めた成果であるが、そうではなくむしろ[1]の側面に重点をおいた研究を進めることが――その前年度の終わりに掲げた――平成28年度の主たる課題であった。その成果としては第1に、教育実践の編成技法のなかでも「順番交替の組織(あるいは行為連鎖の組織)」に焦点を当てた論文である「子どもたちの活発な発言を引きだす――教師の発問構築技法と児童たちの発言機会」を書き上げたことが挙げられるが、この論文が収録される予定の共著書(五十嵐素子ら編,『子どもの豊かな学びの世界をみとる――これからの授業分析の可能性(仮)』新曜社)は年度内の刊行には至らなかった(平成29年度に刊行予定)。 他方で第2に、教育実践の編成技法のうち「修復の組織」に焦点を当てた研究についてもアウトプットに向けた作業を進め、その成果を学会での口頭発表(「授業会話におけるトラブルの修復実践再考――『他者開始修復』に焦点化して」日本教育方法学会第52回大会於九州大学)という形で公表した。今後、この口頭発表の内容に基づきながら分析をさらに精緻化して論文化し、学会紀要などの媒体に投稿していくつもりである。
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