研究課題/領域番号 |
26780432
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
下司 裕子 (北詰裕子) 東京学芸大学, 教育学部, 講師 (30580336)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育思想史 / 教育哲学 / コメニウス / 表象 / 17世紀 |
研究実績の概要 |
本年度は、第一に、ラテン語テクストの翻訳、第二に、従来主著とされてきた『大教授学』の再読、を中心に研究を進めた。 コメニウスのラテン語原典のScola Ludus(『遊戯学校』)の翻訳をすすめた。『遊戯学校』は劇形式の著作であり、第1部から第8部で構成されている。これまで行ってきた大筋の下訳を見直し、いくつかの検討不足な点が見つかったため、修正を行った。なお、修正の際に解釈に必要だと思われる国内外の二次文献を調査し、その読解を行った。 なお、原典の記述において、いくつか不明な点があるため、引き続き検討を行う。 第二に、17世紀を価値移行期ととらえた場合、どのように「教育」が語られ、提示されたのかという観点から、コメニウスの主著とされてきたDidactica Magnaをラテン語原典に沿って分析を行った。特に、コメニウスが当代のどのような言葉をつかって、どのような例えや、また、聖書をはじめとするテクストの引用をどのように解釈しているのか、また、比喩などをつかっていかに「教育」を説明しているのかについて分析した。 従来は『大教授学』は近代教育の端緒となる学校システムや事物主義的教授法についての書として位置づけられてきたが、精読を行うことによって、従来の位置づけとは相反するような『言葉と物』におけるフーコー的な枠組みでの類似的発想や、当代のエンブレムへの言及、時計や諸技術への言及など、当代において「教育」がどのようなものとのかかわりで語られ、表象されてきたのかを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『遊戯学校』翻訳については、見直しを含めてほぼ、予定通りの進捗状況にあるといえる。また、価値移行期における教育の表象の分析についても進捗したが、本年度予定していた渡航が、子育てのため、かなわなかったことから、渡航で行う予定の文献調査ができなかったため、予定していた計画は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が本研究課題の最終年度となるため、第一に、原典翻訳を完成にむけて進めること、第二に、今まで明らかにしてきた成果の一部を、学会や専門研究会で口頭発表すること、第三に、研究成果の一部を、学会誌に投稿し、公表することをめざす。 なお、本年度行う予定で、行えなかった文献調査については、次年度の研究行程では無理があるため、海外渡航は行わず、成果のまとめと発表を中心に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航費とそのうえでの調査・物品購入費を見積もっていたが、海外渡航が出来なかったため、その分の次年度使用額が生じた。本課題を遂行するにあたって、海外渡航の上で入手する予定であった文献ではなく、国内で調査可能な一次文献や二次文献、また、外国の研究機関から借り受け可能な一次文献、二次文献を調査するため、国内旅費、文献借料等として使用する。なお、この変更によって、本研究が別の研究になることはない。むしろ、これまで進めてきたコメニウス研究によって見えてきた新しい可能性を深めることにつながる。
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