研究課題/領域番号 |
26780433
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
上杉 嘉見 東京学芸大学, 教員養成カリキュラム開発研究センター, 准教授 (10451981)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育学 / カリキュラム / メディア / 消費社会 / カナダ |
研究実績の概要 |
初年度は,オンタリオ州とケベック州を対象に以下の調査を進めた。 まず,オンタリオを対象にした研究として,おもに以下の2点を行った。 第一に,中等教育段階に設置されている家庭科の州教育課程,教科書ならびに教員向けガイドブックを収集し,そこから広告の学習を含む項目と単元を抽出した上で,メディア・リテラシー教育が導入された1980年代末前後に目標や内容に変化が見られるかどうかを確認する作業に着手した。また,州教育課程と教材を分析する観点の妥当性を検討するために,家庭科教育と教員養成および現職研修の現状について,トロント地区教育委員会の社会科学・家庭科担当の指導主事,テムズバレー地区教育委員会管内の高校教員,教員団体メディア・リテラシー協会長に聞き取りを行った。 第二に,消費者教育の内容を規定する要因の1つとして商業宣伝の問題を取り上げる消費者運動に注目し,学校教育との連携について調査した。消費者団体の公益科学センター・カナダ事務所長への聞き取りから,連邦や各州議会への広告規制の働きかけと並行して,特に小児肥満対策としての広告学習や食育を促す活動にも取り組んでいることが確認された。 次に,ケベックについては,消費者教育とメディア・リテラシー教育の融合という事象に迫るための基礎作業として,13歳未満への直接的な商業宣伝の禁止というオンタリオとは異なる条件を念頭に置きつつ,消費者教育のなかの広告学習の展開過程を分析した。具体的には1980年代と2000年代の州教育課程と,州消費者保護事務所が1980年代と2010年代に初等学校教員向けに作成した州教育課程準拠の広告学習事例集をそれぞれ比較した。その結果,指導の重点が,広告による欲求の刺激をコントロールするスキルから,広告が健康や環境に及ぼす倫理的な影響を検討するスキルの獲得へと移されていることが明らかになり,この成果を学術論文として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,初年度のあいだにオンタリオの教育課程と教材の分析をおおむね終えることにしていた。ところが,途中で現地調査の時期が研究代表者と訪問先の都合で3月末にずれ込むことが判明したため,2年目に予定していたケベックの研究の一部を先に行い,論文を刊行することもできた。したがって,初年度の研究は順調に進めることができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の前半は,初年度末にオンタリオで収集した資料の分析を集中的に行い,10月開催の日本教育方法学会大会で成果を発表する。後半は,初年度に刊行したケベックの論文で十分に取り上げることができなかった教科書分析や,同州での消費者教育に影響を与えた消費者運動の系譜を解明する課題に取り組む。
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