研究課題/領域番号 |
26780433
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
上杉 嘉見 東京学芸大学, 教員養成カリキュラム開発研究センター, 准教授 (10451981)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育学 / カリキュラム / メディア / 消費社会 / カナダ |
研究実績の概要 |
2年目の研究活動は,おもに以下の3つに分類することができる。 第一に,カナダで1960年代末および90年代初頭に出版された英語の消費者教育教材における広告の章を分析し,その成果を日本教育方法学会大会で発表した。それぞれの時代の商業広告の捉え方に注目し,加えて80年代末のオンタリオ州のメディア・リテラシー教材との比較も行った。その結果,60年代末と90年代初頭の教材比較では,80年代に消費者教育に環境保護の視点が導入されたことで,大量生産と結び付いた商業広告のあり方への評価が厳しくなるという変化を見いだすことができた。他方,消費者教育は,リスク管理能力の獲得を重視する性格から,時代を問わず誇大広告以外の広告を有益な情報源に位置づける傾向があり,80年代末のメディア・リテラシー教材が,商業広告を消費文化の象徴として批判的に分析する活動を含むのとは対照的であることも明らかになった。 第二に,1980~90年代のケベック州消費者保護事務所の商業広告をテーマにした教育事業に関する資料を,ケベックシティのラヴァル大学で消費科学研究者の協力を得て収集した。この事業は,小学校高学年と中学生の世代がクラス単位で参加する,テレビコマーシャル分析のコンクールであり,開催されていた期間は,オンタリオ州でメディア・リテラシー教育が英語科教育課程に導入され,主要な教材が刊行された時期と重なっている。両者の商業広告の捉え方の相違を明確にすることを課題として設定し,資料の分析を進めた。 第三に,初年度に残した課題でもある,子どもと商業広告の関係の捉え方をめぐる議論に関する研究に取り組んだ。具体的には,学校でのマーケティングの禁止を勧告した国連の報告書(2014年)と,学校での商業宣伝の禁止措置をとっているケベック州の事例に注目して,規制の論理を明らかにし,成果を学術論文として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にケベック州を対象にした論文を前倒しして執筆できたため,2年目は,そこで残された課題に関わる資料収集や分析,論文執筆に多くの時間を割くことができた。それと同時に,カナダの英語圏で使用された消費者教育教材の研究とその成果発表も予定通り進めることができた。 他方,ラヴァル大学での資料収集の際,悪天候による図書館の閉館が理由で,予定していた1980年代の消費者教育教科書の閲覧がかなわなかった。これについては,最終年度にモントリオール大学で改めてアクセスすることにしている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の前半は,まずカナダ国立図書・公文書館,ケベック州立図書・公文書館,モントリオール大学で,追加の資料収集を行う。そして,ケベック州消費者教育事務所主催の広告分析コンクール等の資料分析を集中的に行い,成果を7月開催の日本カリキュラム学会大会で発表する。後半は,3年間の研究のまとめとして,学術雑誌への投稿論文を執筆する。
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