研究実績の概要 |
ドイツの学校経営の様態は、(1)「国家の学校監督」、(2)学校の自律性、(3)親、子ども、教員(集団)の教育参加の総体として捉えられる。このうち(2)が政策概念であり現象概念でもあるとすれば、(1)(3)の中には多分に行為概念が含まれる。そこで(1)(3)の実態に着目することで、現象としての(2)が実際どのように生起しているのかやどのような限界があるのかを捉えうる。 1年次、2年次までには、教育参加の実態把握のための現地調査や、上記(1)(2)(3)とかかわる先行研究分析に重点を置いてきたが、3年次(最終年度)にはその補足調査1・2を行った。調査1は、<州文部省―上級学校監督庁―下級学校監督庁―学校>という学校監督行政を上下に貫く「縦の系」に着目したものである。調査2は、<校長―教員―保護者―子ども―その他のアクター>という学校組織にかかわる多様な当事者という「横の系」に着目したものである。 ドイツ国内には学校経営に関わる数多の関連研究が積み重ねられてきたが、上記のフレームはドイツでは自明視され逆に分析対象として特質化されていないことに気づかされる。むしろ、上記調査の視角はすぐれて比較研究的なアプローチによることを再認識させられたのが3年目の研究であった。これについて、ドイツの学校経営の規定条件を、(I)学校監督行政の各段階間(縦)と、(II)学校組織の意思決定(横)を構造化するに至った。 この成果は、問題関心を共有する英国研究者の協力を得て日独英の3か国比較研究としてまとめ、国際教師教育学会(International Society for Teacher Education: ISfTE 2016 Asia Pacific Regional Conference, 21 - 22 November 2016, in Malaysia.)にて発表した。
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