研究課題/領域番号 |
26780437
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
本所 恵 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80632835)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カリキュラム / 後期中等教育 / スウェーデン / 専門教育 / 教育の質 |
研究実績の概要 |
本年度はまずスウェーデンの高校改革を普通教育と専門教育の関連に着目して整理しなおし、それを踏まえて、2011年の高校改革の概要を整理した。2011年の改革については、詳細な内容や背景、実際の変化や改革評価に関する資料を収集するとともに、現実の状況を知るためのフィールド・ワークを実施した。 複線型の学校体系を単線化して70年代に誕生した高校は、すべての若者に後期中等教育を保障することをめざして、共通履修教科を設定し、90年代には入学・卒業要件の共通化や全学科からの大学進学を可能にした。しかし2011年の改革では、共通履修教科の割合が減って専門教育が増加し、入学・卒業要件は学科によって異なることとなり、職業系学科からは大学進学が困難になった。この整理から、高校においては、教育内容の共通性ではなく、各分野の専門化につながる基礎教育、および、近年国際的に注目されてもいるコンピテンシーの育成を共通に保障しようとしていることが示された。 学科間の差異を拡大すること、とくに職業系学科からの大学進学が困難になる点に関しては、研究者や教師をはじめ学校関係者から改革前すでに多く批判が寄せられていた。改革後数年を経た現在、職業系学科への入学者が明瞭に減少していることが示され、この事実は改革の評価を下げていた。今後の経過とこの傾向の意味することの検証は今後の作業である。 職業系の学科・学校では、実習の拡大や質向上をはじめ、専門教育の改善が積極的に行われていた。2011年の改革で産業界とのつながりが強調されたことを受けて、分野によってかなり異なるものの、今まではあまり行われていなかった地域でも連携が行われるようになってきていた。ただしこうした努力は、近年EU諸国が共有する方向性でもあり、教育の方向性は改革前後で変化してはいないと感じている学校教師たちがいることもフィールドワークでは明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、今までの改革動向を整理し、2011年の改革の分析をすすめることができた。また、文献だけでは得られない貴重な情報をフィールドワークから得ることができた。ただし、スウェーデンの改革に関する検討は進んだが、それをもとに日本の高校教育について検討することは今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
スウェーデンの高校について、フィールドワークで得た情報の整理・分析を行う。それを加えて、これまでの調査で明らかにしたスウェーデンの高校教育やその改革過程を日本のそれと比較検討する。そのために、北陸地方を中心に日本の多様な高校を訪問調査し、実態把握に努める。 今年度の研究を進める中で、スウェーデンにおいても日本においても教育評価のあり方が論点となっていることが明らかになった。そしてそれは教育課程のあり方と深くかかわっている。そのため、今後の研究においては、教育評価に焦点を当てて教育課程のあり方を検討していくこととする。より具体的には、共通教科や専門教科においてどのような評価が行われ、教科間でどう関連しているのか、また、教育課程全体のまとめとしてはどのような評価が行われているのかということである。
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