研究機関内に複数の保育施設において継続的な音楽表現活動を実施し、その結果の分析を通じて保育計画に位置づく音楽表現活動プログラムの構築を試みた。その結果、日常の保育や子どもの遊びとの連関を意識した音楽表現活動を継続的に実施することで、乳幼児の音や音楽へのかかわりが変化することが明らかになった。 乳幼児期における音楽的発達を踏まえ、保育における音楽表現活動は以下の3つの視点をもって構築することが重要ではないかと考える。ひとつめは声をつかったコミュニケーションを基盤とし、そこから声の表現、ひいては歌唱表現へとつなげていく視点である。声を使ったひととのやり取りは乳幼児期の非常に初期の段階からあらわれるが、そこにはさまざまな表現の要素がある。コミュニケーションの中で自分の声を使い分け、相手とやりとりしていくことが音声表現の基盤であり、歌唱もそれに支えられている。 二つ目は環境とかかわり、音を出すということからモノと子どものかかわりを考える視点である。生まれてすぐ、乳児は身の回りの環境とかかわりながらモノの属性や特性を身体を使って把握していく。そこには音を出すという行為も含まれており、音を通してモノとかかわり、モノと対峙する自分の身体を知っていくという視点が、いずれ楽器とかかわるようになる際にも重要となるであろう。 三つ目は音に気付く、音を聴くという視点である。聴覚は胎生期の早い段階から発達するが、乳幼児の音の聴き方は成人のそれとは特性が違う。それを踏まえたうえで、乳幼児が音に気付き、音に耳を傾けることのできる音環境を整えていくという視点が重要である。 以上の点をふまえ、保育においては子どもの発達、遊び、保育内容と乖離しない形で日常生活の中にある音楽表現の基盤に働きかけるような活動を組織していくことが重要である。
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