これまで地方自治体の幼児教育体制について政令指定都市を中心に訪問調査を行い、職員へのインタビューを通じて子ども・子育て支援新制度への対応に関する実態について把握してきた。その中で、外国籍の幼児への対応等に苦慮する実態が散見されたことから、日本の幼児教育体制の在り方を検討する上ではさらに視点を広げる必要性を実感した。さらに視点を変えると、海外で暮らす日本国籍の乳幼児への幼児教育体制についてほとんど知られていないことに気がついた。 そこで、平成29年度は、日本の地方自治体における幼児教育・保育体制の在り方を検討する上で俯瞰して分析する視点を得るために、海外の日本人学校(補習校)における幼児教育・保育体制の実態を把握することとした。具体的には、ドイツにあるフランクフルト日本語補習校へ訪問し、教職員へのインタビュー調査を実施した。 ここから得られた知見としては、第1に、海外の日本人学校(補習校)は日本の法制度に準ずる施設として位置づけられていることから、必ずしも正規の教職員が授業を行っているとは限らないという実態である。第2に、日本人学校(補習校)に通学する幼児の両親は必ずしも日本国籍とは限らず、将来日本に帰国する前提ではなく、多様な社会的背景を抱えた幼児が通学している点である。第3に、指導内容としては日本固有の伝統をベースにしながらドイツとの比較をすることでアイデンティティを確立させる指導を工夫している点である。 今後は新しい幼稚園教育要領が施行される中で、地方自治体における幼児教育・保育体制の在り方を検討する上で、グローバルな視点を持つことが重要であることを認識した。
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