本研究の目的は、学校統廃合の実施による地域への影響を地域の表現形式や活動形式などの具体的な次元に掘り下げて明らかにして、さらにそれらの変容に基づく地域の再設計方策を検討することである。採択期間の4年目である最終年度は、これまでの研究のまとめとして、前年度まで実施してきた事例調査について定点観測と資料収集を継続するとともに、学校統廃合実施後の地域コミュニティの動態や様相を総合的に考察した。 第一に、学校統廃合にともなう地域表現の変容については、引き続き統合校の校名や校歌に焦点を当てて、校歌制定過程を分析した。統合校の新たな校歌に込められる住民、保護者、教職員、子ども、作詞・作曲者の多様な教育的意図の調整過程を明らかにした。 第二に、学校統廃合にともなう地域活動の変容については、まず、閉校後の地域で新たに創出された行事に注目して、それが構想される過程と実施体制や継続上の課題について明らかにした。さらに、学校と地域の連携・協働体制が求められるなか、統合校と閉校地区の関係構築がどのように進められているかを調査した。 第三に、本研究のまとめとして学校統廃合後の地域の再設計方策を考察するため、複数の事例調査の結果を比較分析して、学校統廃合後の地域が統合後の新学区と統合前の旧学区による複層的なコミュニティとして形成されている構造を指摘した。さらに、学校を核とした地域活動の集約体制が人口減少下では脆弱な側面を有する点について指摘し、過疎化・少子化が進む地域でこそ学校教育と社会教育を自律させてモジュール化する必要性について検討した。 以上の研究結果を全国学会での口頭発表や学会誌の論文で公表して他の研究者から意見を得た。人口減少下で縮小や撤収の流れにある現代の学校教育に相対する社会教育の役割を究明する必要性が明らかになった。
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