本研究は、近年の教育の私事化状況の問題の焦点を、わが子のみに意識を向けるという保護者の私的関心の排他性に見出し、これを解決するために、保護者の意識において子どもたちに向けられる共通関心が形成される意義や、その形成過程を明らかにすることを目的としている。 研究期間全体を通じて、複数の保護者と教師を対象にしたインタビュー調査により、次の諸点を明らかにしてきた。それによって、保護者の学校参加のためのいくつかの条件が示されることになった。 明らかにしてきた諸点とは、すなわち、保護者における共通関心の形成条件や機能と意義、形成された共通関心と既に保持されていた私的関心との連関・構成、共通関心の持続性、保護者の意識と当の保護者の学校関与との連関、保護者との関係形成に関わる教師の専門性の内実、当該専門性の同僚教師との関係における位置づけ、である。 最終年度には、以上の諸点に関わる成果の意義を確認しつつ研究の展開を探索するための調査を行い、今後の研究の展望を得た。また、本研究を通じて得られた、保護者意識の変容過程における学級通信の意義に関する研究成果を論文にまとめた。
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