今年度においては、研究休暇を1年間頂いたために、韓国ソウルに滞在しながら、関係者及び当事者のインタビューを実施し、関連団体に対する調査を行う一方で、韓国の社会教育及び多文化教育の関連学会からも関連研究の最新情報を収集することができた。 韓国において、国際結婚は2008年を起点を減少の傾向を見せているが、実際に結婚移住女性たちの世代交代も観察できたのである。1990年代までの日本人を中心とする結婚移住女性の世代をはじめ、多文化政策が積極的に動き出す前の世代、多文化政策の最中に韓国社会に参集した世代など、大まかに第三世代に差し掛かっているともいえる。さらに、結婚移住女性当事者のネットワークが形成されるにつれ、支援団体にかかわる当事者も減ったのは、2000年代後半の状況とかなり違っていた。 2012年末から韓国においても、多文化政策を否定する声が上がっている中で、多文化政策や多文化教育に関わる大きな政策的進展はみられず、結婚移住女性たちの世代交代もあり、いままでの多文化教育の枠組みではとらえきれない状況になっているともいえよう。ただ、二重言語講師や多文化講師というルートから多文化教育に関わる女性たちのインタビューも行い、どういった経緯から関わっているのか、彼女たちが韓国社会に参入してきた時代とどのような相関関係があるのか、今後分析を行う予定である。 そして、多文化家族支援センターを拠点とした多文化教育支援によって、それまで市民レベルで支えてきた市民団体が持続的な活動を展開しにくくなっている様子も見受けられた。 2017年に新しい政権が発足することで、ここ何年間停滞している多文化政策・多文化教育政策がどのような方向に向けて動いていくのか、注目しなければならない。
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