今年度の研究においては、引き続き韓国の多文化教育に関する調査を行った。また、韓国も日本の多文化共生をめぐって閉塞的な状況が続いていることを踏まえ、ドイツのベルリンにおける多文化教育に関する現地調査も行った。 まず、韓国の調査においては、今までの保守政権と違って、韓国の多文化政策が確立した政権と同じ流れの政権が発足したものの、この間の地域における状況の変化もあり、目立った変化はみられなかった。一時期活発に行われてきた多文化教育に関する研究も減っており、今までの政策を維持する傾向を見せていた。 一方、ドイツのベルリン調査においては、難民収容施設と市民大学、そして、多文化の女の子たちのための居場所づくりをしている団体を訪問し、話を伺った。日本や韓国の多文化教育政策と共通点もあったが、市民大学の場合は、保護者のためのドイツ語コースが別途設置されることで、ドイツの教育制度を含めたドイツ語が学べるコースがあったり、難民に対する政策も日本の定住促進センターのそれとは異なる側面が存在していた。さらに、ドイツにおいても、この間難民が多く入ってくるために、難民の受入れをどのように考えるのか、また、多文化共生に対しての視点が、地域や階層によっても異なることが確認できつつも、ドイツは、「外国人」や「難民」という区分をしないところは学ぶべき点であると思われる。 韓国も日本も2010年以降の外国人嫌悪行為の増加があり、マジョリティをどのように説得していくのかが、これからの多文化教育を考える上でとても大事な課題になっているのである。したがって、ドイツのように、同じ「市民」という立場から考えること、「統合」という視点に基づきながら考えることが必要であるという知見が得られた。2018年12月に入国管理法が改正された日本では、社会のすべての構成員の「統合」という土台に基づいた政策づくりが求められている。
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