研究課題/領域番号 |
26780451
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
小島 優生 獨協大学, 国際教養学部, 准教授 (40433651)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自律的学校経営 / 学校(単位)責任経営制 / 学校共同体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、韓国において、自律的学校経営の核である「学校協議会」(韓国では学校運営委員会)が学校内政策決定過程において「どのような条件下で」「どのような機能を果たしているか」について、グラウンデッドセオリーアプローチを用いて明らかにすることを通じて、日本における学校運営協議会設置による学校経営改革について理論的・実践的示唆を与えることである。 平成26年度は主に先行研究の渉猟・分析による分析枠組みの設定・インターネットを通じた予備調査を実施した。 先行研究の分析の結果、学校運営委員会を基礎付ける理念として、「学校(単位)責任経営制」「学校共同体」を設定したが、これは一部矛盾する観点を含む。前者はモニタリング機能が、後者は共同体性が重視されるのである。 これらに分析枠組みをもとに本年度はフィールドワークに入る前の事前調査として、フィールドワーク予定の学校の校長及び保護者に対し、インターネットを使用した予備的調査を中心に行った。まず校長への調査で得られた結果として、ルーティン業務(例えば予算・決算など)は保護者入力による学校運営の革新性は発揮されないが、モニタリング機能の観点から学校運営委員会が「効果的」と判断される。他方、特殊目的予算の獲得や、校長招聘制などの非ルーティン業務を併用した場面においては、保護者との協働が見られ、共同体性の観点から「効果的」と判断されているようであった。しかし、教育課程に関しては、いずれも認識されずあまり「効果的」ではないと認識されているようであった。 保護者への調査は大きな差異が生じた。これは学校との関係性の有無や、子どもや学校への期待内容、性別による影響を大きく受けるためと考えられる。このような結果から、保護者対象の調査はより普遍化が可能となるべく調査方法の工夫が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、2年間の期間のうち、1年目を分析枠組み設定とフィールドワークに当て、2年目をインタビュー調査とするべく計画していた。現状ではフィールドワークが不十分な状態にあり、進行状況としては「やや遅れている」と判断せざるを得ない。 遅れた理由としては予備調査のうち、保護者対象の調査において、調査対象者の一定数の補足が困難であったこと、及び妥当性のある回答が得られなかったためである。そのため、非委員経験の保護者に関しては当初予定では校長・教員に依頼した上でのインタビュー調査を計画していたが、悉皆のアンケート調査に切り替え、妥当な結果を得られるように変更する必要があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り初年度は先行研究の分析により学校運営委員会の分析枠組みとして「自律的な学校経営」、「学校責任経営制」、「学校共同体」を設定した。またフィールドワークに入る前提として、インターネットを通じた予備調査を実施した。 これらを踏まえ今年度においては、フィールドワークとインタビュー調査を実施すること、そして結果の分析を行うことになる。前述の通り、インタビュー調査のうち、非委員経験保護者に対しては予算の範囲内でインタビュー調査から悉皆アンケート調査に変更することで遅れを回復したい。 これにより、当初設定した学校運営委員会を通じた学校運営の動態的かつ実質的機能を明らかにし、かつそれがどう学校改善に結びつくかを明らかにしたい。また、これらの改革動向は言うまでもなく日本でも実施されており、本研究をもとに学会発表・執筆などを通じて日本の政策に示唆を与えることも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、主に当初1年目に予定したフィールドワーク調査が延期となったため、外国旅費の使用分が次年度へ持ち越されたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定通り、フィールドワークの実施のための外国旅費として使用することに加え、非委員経験の保護者に対してのアンケート調査を実施するための通信費・アルバイト謝金として使用する計画である。
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