本研究は、韓国の学校運営委員会の動態分析を行うことを通じて、学校運営への効果を問うことを目的としていた。 本年度は、予定していた調査対象校への継続的な観察調査を継続するとともに、関係者に対してまずアンケートを実施し、それをもとにインタビューを実施した。最終的には4校の観察とインタビューを実施することができた。そこからの結果としては運営委員会では、議論というよりは決定事項の質疑・承認がほとんどであること、それによって設置が具体的な運営には直接的に影響を及ぼしていないことがまず明らかとなった。 加えてそれらを踏まえて実施したインタビューでは、校長は承認と、学校支援者の獲得の観点から学校運営委員会設置を評価していること、他方で保護者や地域は学校運営の可視化に対し評価をしていることが明らかになった。 ところで、韓国における教育政策決定のアクターとして学父母団体がある。その中でも最大規模を誇る革新系保護者団体である「真の教育を実現する学父母連帯」は、学運委が設置される前の政策決定プロセスに関与し、現在でも学校運営委員の研修実施や改革に関わっている。今回はこの団体の代表へのインタビュー調査が実現し、現在は権利ある父母の学校参加が志向されつつあることが明らかになった。 まとめると新自由主義や教育自治といった改革の産物として生まれた学校運営委員会ではあったが、当初目的の学校共同体や多様な教育実現には結実しなかった。しかし今後は保護者の権利実現の場としての役割が課されたことになる。 本研究の結果、90年代新自由主義的教育政策における保護者参加は、共同体意識や多様性実現には結実しなかった。しかしながら当初予定とは異なる副産物(=信頼や支援関係の構築)もあり、それらが今後権利としての参加への布石となっている。このように90年代韓国の学校運営改革の動態と帰結を明らかにすることができた。
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