研究課題/領域番号 |
26780457
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
山田 知代 帝京科学大学, 教育人間科学部, 講師 (80709121)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 児童・生徒の懲戒 / 法的懲戒 / 事実上の懲戒 / 手続 / 行政手続法 |
研究実績の概要 |
本研究は,児童・生徒に対する懲戒の公正性・透明性を担保する手続制度の在り方について,教育学と法学の学際的視点から検討することを目的としている。平成28年度は,①先行研究の分析,②各地方公共団体の学校管理規則等の比較,③児童・生徒の懲戒に関する裁判例の収集・分析を継続して実施した。その結果,以下の点が明らかとなった。 第一に,懲戒停学と類似する事実上の懲戒として,自宅謹慎,学校内謹慎,自宅待機等が存在するが,先行研究においては,これらの区別を強調する見解と,あまり強調しない見解との両方が存在していた。従来,これらはその境界が曖昧な形で解釈されることがあったが(「停学」には謹慎,出校停止等のそれぞれ実質的にこれに準ずる懲戒処分を含む等),近年,規制改革会議による批判を契機として,「法的な懲戒」と「事実行為としての懲戒」の混同は,忌避される傾向にあり,行政解釈にも変容が見られることが明らかとなった。 第二に,地方公共団体の学校管理規則等を比較した結果,学校教育法施行規則26条2項に規定された退学,停学,訓告とは別に,自治体独自の懲戒を定めているところが存在していた。例えば,埼玉県では「懲戒のうち,戒告,謹慎,停学及び退学の処分は,校長が行う」(埼玉県立高等学校通則27条2項)とされ,校長が行う法的な懲戒の一種として,停学とは別個に「謹慎」が規定されている。 第三に,生徒の懲戒に関する裁判例においては,自宅待機措置について,「不利益を受ける生徒の保護者がその内容を理解し,真意に基づいてこれを承諾しておれば,債務不履行の違法性は阻却される」が,その際には,「自宅待機措置の内容,期間(復学時期),目的,保護者が承諾しなかった場合の学校側の措置等を,控訴高校が十分に説明して,保護者がこれを理解した上で承諾することが必要」となることが示された(広島高等裁判所判決平成27年11月11日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集及び裁判例の収集・分析が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,児童・生徒の懲戒に関わる裁判例・事例の収集・分析を進めるとともに,関係者への調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に終了予定であった調査データの収集に多くの時間を要し,次年度においても継続が必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
文献調査,裁判例・事例収集を継続するとともに,関係者への調査を充実させる。
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