本研究は,1960年台前半に確立し,1970年代に「安定・拡大期」に入った後,1980年代中盤以降縮小期に入った「戦後義務教育財政システム」がどのように拡大し,なぜ,どのように改革の対象となり,実際の改革が行われることとなったのかを明らかにしようとするものである.そのために,公文書等一次史料に基づいた実証的調査研究を行い,今日の改革に対しても,経路依存を視野に入れた政策的オプションを提示するとともに,制度設計上の指針を提示しようとするものである. 三年目である平成28年度は,①先行研究の整理,②一次史料の収集,③回顧録等の収集,④マクロなデータの収集,とそれぞれについての整理を継続した.特に,国立国会図書館憲政資料室所蔵の「新自由クラブ関係文書」,KINS所蔵の「香山健一所蔵文書」,「藤波孝生関係文書」,「奥野誠亮関係文書」は,当時の文教族関係文書として特筆すべき史料群であり,重点的に参照するとともに,前年度までに収集した臨時教育審議会関係史料に加え,国庫補助金削減を提起した臨時行政調査会関係史料の収集を継続した. 研究成果の公開に関しては,平成28年度に所属研究機関を変更したため,研究遂行の環境に変化が生じたこともあり,関連学会大会における研究発表を行うことはできなかったものの,関連学会年報・紀要に投稿中の論文を執筆したほか.当該期を対象とした書籍の分担執筆を行った.後者については平成29年度中に刊行の予定である.
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