本研究の最終的なゴールとして設定していた「マイノリティの子どもを包摂する学校参加の在り方の理論化・体系化」については前年度までに一定の成果を発信できたことから、最終年度はその内容を応用・発展させることに注力した。具体的には、「マイノリティの子どもを包摂する学校参加の在り方の理論化・体系化」を行う過程で得られた知見をもとに、(1)「社会に開かれた教育課程」や「チームとしての学校」がもたらす影響に迫ること、(2)「社会に開かれた教育課程」や「チームとしての学校」を推し進めるうえで留意すべき点を明らかにすることが、主要な課題となった。その結果、「社会に開かれた教育課程」や「チームとしての学校」はマイノリティとされる子どもの包摂を約束するものではなく、学校そのものが多様性に開かれた場へと変革していかねばならない点を指摘するに至った。また、「社会に開かれた教育課程」がその理念として掲げる「学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させる」というのは、学校の内→外、官→民、教育→福祉というベクトルのみならず学校の外→内、民→官、福祉→教育というベクトルをも含むものでなければならないことが示唆された。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として最も重要な点は、学校を開くことがマイノリティとされる子どもの包摂に資するかどうか、その鍵を握るのは教員と異なる立場にある非専門家スタッフによる「アドボカシー」であると明らかにしたこととなる。「アドボカシー」とは子どもの意思の代弁と権利の擁護から構成されるもので、その遂行には非専門家スタッフ同士のネットワーキングが重要な役割を果たす。非専門家スタッフによる「アドボカシー」は時に学校への異議申し立てを伴うが、子どもの最善の利益を保障するためには異質な価値のぶつけ合いが不可欠と言える。
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