平成29年度はこれまでのアンケート研究のまとめを行いながら、継続して保育カンファレンスを実施した。 アンケートの研究のまとめでは、保育カンファレンスを実施したのち、保育カンファレンスを実施しなくなっても効果がみられるのは、「管理職との保育方針」の共有のみであり、「同僚性」や「満足感」はカンファレンスを実施しなくなると低下してしまうことが明らかになった。この結果は、保育カンファレンスをモデル実施してきたことの一番の効果は、園長などの管理職の意識、行動の変容、あるいは保育士の管理職に対する意識、行動の変容があったといえる。保育者同士の関係、「同僚性」については、保育カンファレンスの効果は短期的であり、中長期的には効果が持続しづらいことがあきらかになった。これは、今回調査を行ったのが公立保育園であったことから、職員の異動等があり、体制的な問題として同僚性が中長期的には根付きにくかったことが考えられる。 同様に、保育の仕事の満足感も、恒常的な変化は生まれず、保育カンファレンスの実施により短期的には向上するが中長期的には元に戻ってしまう結果となった。これは、さまざまな保育を取り巻く社会的背景の変化も原因のひとつとしても考えられ、さらなる調査研究が必要であると考えられる。 一方、保育カンファレンスの質的な分析においては、特に若手保育士がベテラン保育士の保育と自分を見比べてしまい、自信や自己肯定感の低下を起こしやすくなっている現状が明らかになった。保育カンファレンスを通じて、ベテラン保育士が若手保育士士に対し、自らの保育士としての成長過程を語ることで、若手保育士は安心感を持つことがわかり、保育カンファレンスにおいては、先輩―後輩の対話が重要になってくることが明らかとなった。
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