研究課題/領域番号 |
26780468
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研究機関 | 比治山大学短期大学部 |
研究代表者 |
土井 貴子 比治山大学短期大学部, その他部局等, 講師 (00413568)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 教育史 / イギリス / 成人教育 |
研究実績の概要 |
本研究は,20世紀前半のイギリスの大学におけるソーシャルワーク教育コースの設置過程とその実態を成人教育史のなかに位置づけ明らかにすることを目的にしている。具体的には,バーミンガム大学にソーシャルワーク教育コースが設置される過程とその実態を,労働者教育協会を主とした成人教育機関との関わりや成人学生の学習という観点から検討する。コース設置における大学人の意図,労働者成人教育団体が果たした役割,大学のソーシャルワーク教育コースに入った成人学生たちの実態を実証的に明らかにする。20 世紀前半の成人教育の展開を福祉国家への移行の観点から再評価することを目的とする。 効果的に研究を進めていくため,テーマを2つにわけ,段階的に取り組むこととした。平成26年度は,テーマ①のバーミンガム大学におけるソーシャルワーク教育コースの設置過程を中心にすすめていくこととした。ソーシャルワーク教育コースは,富裕な女性たちが1899年に組織したバーミンガム・セツルメントの活動と密接に結びついていた。バーミンガム・セツルメントはバーミンガムのインナー・シティに住む貧困の女性と子どもの生活を支援する団体であったが、活動家の女性たちは支援の過程でソーシャル・ワーク教育を求めるようになった。1900年に新たに大学となったバーミンガム大学にとっても、地元との結びつき方は課題であり、実践的なコースの提供は有益であった。商学部で1905年からソーシャル・スタディー・コースがはじまり,1908年からはWoodBrookeカレッジと連携したソーシャル・ワークの訓練コースが設けられた。アカデミックな教育と現場と結びついた実践のバランスを意識したコースであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、バーミンガム大学史におけるソーシャルワーク教育コースの設置過程について考察した。26年度に予定していた設置をめぐる議論については、考察が不十分であるため、研究の進展はやや遅れていると判断した。27年度も継続して考察する。その成果は、27年度中に学会等で報告する。 本研究は、成人教育運動、なかでもセツルメント運動からソーシャルワーク教育について分析をする研究であるが、セツルメント運動についての先行研究の分析が不十分であったことが明らかになった。成人教育史のなかで研究されてきたセツルメント運動だけでなく、社会事業史のなかで蓄積された国内外の先行研究について検討する必要がある。 Woodbrookeカレッジについての史料収集も終了しておらず、27年度に継続していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、バーミンガム大学におけるソーシャルワーク教育コースの設立過程を,コース設立に尽力した2名の大学人を中心に考察する。一人は,バーミンガム大学学長かつ労働者教育協会ミッドランド地区議長のオリバー・ロッジ,もう一人はバーミンガム大学の哲学の教授であり,Social Study Committeeや合同委員会委員長をつとめたJ. H.ミューアヘッドである。大学の議事録、報告書、パンフレット、そして彼らの自伝等を用いながらコース設立をめぐる議論の分析をすすめる。誰が,どのような意図で,Woodbrookカレッジと連携したコースを大学に設置したのかを明らかにする。 その際,成人教育団体とのかかわりという観点から考察する。なぜWoodbrookカレッジだったのか,コース設置に成人教育団体の誰がどのように関与したのか,Woodbrookカレッジがすすめてきたセツルメント運動とはどのように関わるのかを分析する。 あわせて,Woodbrookカレッジについての史料調査を重点的におこなう。まずはバーミンガム市立図書館に残るカレッジの史料を調査する。また,学生に関する史料を収集し,分析する。バーミンガム大学に残るソーシャルワーク教育コースの学籍等の史料や報告書などを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の直接経費のおよそ8%を次年度使用とした。その理由は、洋書の購入が間に合わなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
全額を書籍の購入にあてる。
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