バーミンガム大学におけるソーシャル・ワーク・ディプロマ・コースの展開を、成人教育機関である常設居住型教育セツルメントの「ウッドブルック」との連携という観点から主として以下の2点について分析を進めた。 第一に、夜間開講のソーシャル・スタディ・コースから昼間のディプロマ・コースへの展開である。ソーシャル・スタディ・コースは、労働者教育協会バーミンガム支部の設立に合わせて計画され、労働者成人対象の夜間コースとして開講された。労働組合や生活協同組合等でも活動を展開する労働者成人が受講し、社会経済学や地方行政、公衆衛生などを学んだ。それは、彼らの生活にかかわる社会的問題を議論する場であった。同コースは開設から4年のうちに慈善団体や行政でのソーシャル・ワークにかかわる者たちをひきつけ、彼らからの要望に応える体系的な教育コースに改編され、ディプロマを授与するコースとなった。その際、大学単独実施ではなく、ウッドブルックと連携した講義の実施や実習が設定された。大学成人教育のあり方が進展するなかで、自らの社会的問題を理解する機会であった労働者成人を主たる対象としたコースから、教育セツルメントと連携した、福祉の進展とともに増加した将来ソーシャル・ワークの領域で専門的な活動を展開したいと希望する者のコースへと変容した。 第二に、コースの学生である。ディプロマ・コースの学生のうちウッドブルックに在籍していた学生は、毎年10名弱であった。最終的にディプロマを取得しえた学生は5名以下であった。とはいえ、コース学生の半数程度を占めた。特色の一つであった実習は、学生が困難を抱える人たちの生活や要望を直接的に理解する機会となった。修了後彼らは、工場、セツルメント、職業安定所などで福祉職に就いた。大学に進学し学習を継続する者もいた。今後、ウッドブルックの講師や学生たちの声からコースでの学習のありようをまとめる。
|