今年度の当初の課題としては①検定試験に使用された教科書(参考書)の分析、②各試験分野における試験問題の分析とし、付随して③前述の①・②において必要となる追加資料の随時収集、④研究成果の公開の4点とした。 このうち③の作業において得た資料を分析したところ、当初想定していなかった結果となった。このため以下の理由で①のようなやや派生的な分析については詳細を今後の課題とし、②の試験問題の分析に注力すべきと判断した。すなわち①については、大正7年、尋常小学校本科正教員、小学校准教員、尋常小学校准教員の3資格において、教育科教科書が乙竹岩造のものにほぼ統一されていたことが判明していた。このため乙竹の教科書の分析を進めていたが、ほぼ同時に師範学校の教科書も変更されていたことが追加調査で判明した。師範学校では乙竹教科書の採用がわずかであったことから、なんらかの教育思想を理由として乙竹教科書を採用したというよりは、各資格間において教科書を統一し、資格ごとに教科書が変更され学び直す必要がうまれる問題点の解消に重点があったものと判断した。 以上のことから、②・④に関して、明治期から昭和戦前期に至るまでの判明している試験問題の分析に重点を置いて実施し、事前に明治40年以前の試験分野に関する研究を投稿していた経緯から、明治40年までの試験問題の分析を投稿した。同時に明治40年以降の分析について投稿を準備している。特に兵庫県においては「教育科」試験が複数の小分野に分かれたことが判明していたが、試験問題の分析を進めた結果、分割の前後で問題数としても分野としても出題傾向に変化が乏しいことがわかった。これにより、「教育科」分割の実態は、分割前と比較して半分だけでも合格すれば、次回以降合格分については受験が免除される特典を活用できる点において受験者側に有利であり、受験者に対する便宜的目的があった等の分析を行った。
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