本研究の目的は、近年各国でその育成の必要性が指摘されているリテラシーやICTスキル、問題解決能力等の汎用的なスキルが、多様な背景を持つ子ども達にどのように教えられ、評価されているのか、またそれが実際に子ども達の教育に従事する教員に求められる 資質・能力にどのような影響・変更をもたらしているのかを、多文化国家オーストラリアを事例に検討することである。具体的には、近年、教育成果の向上のために大規模な教育改革に取り組むクイーンズランド州を主たる対象として、2013年から各州で段階的に導入が進められているナショナル・カリキュラム(「オーストラリアン・カリキュラム」)の運用過程を、その柱の一つである「汎用的能 力(general capabilities)」の育成に注目して整理・分析・検討する。 平成29年度は、8月にクイーンズランド州ブリスベン、タウンズビル、トレス海峡島嶼地域木曜島を訪問し、州立図書館・大学図書館等で資料収集を行うとともに、関係者に聞き取り調査を行い、「オーストラリアン・カリキュラム」の実施状況についての情報のアップデートを行った。また、木曜島では初等学校にて授業見学も行った。平成30年3月には、ビクトリア州メルボルンを訪問し、「オーストラリアン・カリキュラム」の全国的な実施状況について、その開発に携わった研究者を中心に聞き取り調査を行った。 平成29年度は、これまでの研究の成果を、日本比較教育学会(6月、於東京大学)およびオセアニア教育学会(12月、於東京工業大学)の全国研究大会にて報告した。また、北海道大学教育学研究院紀要(平成30年6月刊行予定)にも論文を投稿した。
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