近年、大学教育の質保証が重視される中で、大学生の学習成果とその規定要因に関する研究が数多く実施されている。しかし、こうした研究のほとんどが学生の学習成果として学生の自己申告や自己評価(間接評価)を使用しており、実際の成績(直接評価)を使用していない。そこで、本研究では、直接評価 (累積GPA)と学生調査によって得られたデータを用いて、医学生の学習成果(成績)の規定要因を明らかにすることを目的として、研究を行った。 千葉大学医学部6年次学生を研究の対象とし、2012年度92名、2013年度 96名の合計188名の学生のデータを用いた。学生の社会経済的背景(親学歴)や社会的属性(性別)、学生の科目の学習や課外活動への関与等を説明変数とし、学習成果(学内での成績・累積GPA)を被説明変数として重回帰分析を行った。 分析の結果、在学中の成績に対しては、学生の社会経済的背景や社会的属性といった可変性の低い変数よりも、大学入学後の学生の学習への関与や経験といった可変性の高い変数の影響が大きいことが明らかになった。こうした傾向は間接評価を用いた先行研究の結果と同様であり、直接評価を用いた今回の分析においても同様の結果が確認されたことに学術的な意義があったと考えられる。さらには、大学教育の改善を検討するための基礎となるエビデンスを得られたという点で、実践面での意義もあったと考える。 この分析結果を、第22回大学教育研究フォーラム(於:京都大学、2016年3月17日)にて、前田崇「医学生の学習成果と規定要因」として発表した。
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