本研究の目的は、在日外国人の若者たちの<学校から仕事へ>の移行過程におけるキャリア形成を把握し、それに対する移行支援の実践的課題を協働実践によって明らかにしていくことであった。研究期間を通じて、関連する文献のレビューや関係団体・機関への聞き取り調査を進めると同時に、大阪で取り組まれている在日外国人若者の活動や集まりに実践的に関わり、長期的な参与観察やインタビューを実施した。 外国にルーツをもつ子どもの教育課題についてはこれまで多く指摘され、学校や地域NPOなどで取り組まれてきたが、学校期を経るとこうした課題への関心は薄まるのが現状であった。しかし近年さまざまな地域で、若者の居場所や発信の場づくり、就労支援、若者支援、交流会、同窓会などのかたちで取り組みが進められていた。居場所は一つであるというより複数存在し、それらをまたぎ、つなぎ合い、時には葛藤や違和を内包するような場であった。また、若者たちがみずから集う場は、ニューカマーに限らない在日韓国・朝鮮人や日本生まれ日本育ち、ダブルやクォーターなど多様な人たちの混淆の集まりへと化しやすいことも特徴として見られた。教育機関を経るといっそう個人化と新自由主義的な力学が強くはたらき、多様なかたちのアイデンティティをもつ若者たちは、強固で一枚岩的な民族の帰属意識にあてはまらない。かと言ってみずからの力のみでネットワークを形成することも難しい。協働的な営みを通じて共同性が立ち上がり、自己が語られ、語り直されていた。同質性の強い職場環境や社会を生きる一方で、こうした場には当事者性を取り戻すための抵抗文化の創造や語りのプロセスが見られた。 こうした分析を、申請者が若者へ行ったインタビューや参与観察をもとに理論化する。このことは現代日本社会の若者たちの経験や実践を在日外国人教育の歴史や実践に位置づけるものであり、捉え直しにも寄与すると考える。
|