研究課題/領域番号 |
26780479
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松井 真之介 神戸大学, その他の研究科, 研究員 (70533462)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ムスリム学校 / コミュノタリスム / 私立学校 / ライシテ / 多文化教育 / マイノリティ |
研究実績の概要 |
2014年度は、主にムスリム学校に焦点を絞り14年9月と15年3月に現地調査を行った。訪問校はパリ地域で2校、リール地域で2校、マルセイユ3校、トゥールーズ3校、モンペリエ2校、オルレアン2校の計12校だったが、学校自体の閉鎖や運営上の困難、さらに15年1月パリにおけるテロ事件によりムスリムコミュニティが外部に対して非常に警戒しているためか、準備していた調査訪問がキャンセルされるなどで、最終的には12校の内7校のみ調査することができた。 調査の内容に関する実績としては、まずこの研究の大きな動機である「なぜここ数年間でムスリム学校が急激に増加したのか、その理由と社会的背景」について、訪問した各学校からそれぞれの事情に基づいた経緯と回答が得られた。大きく分けると、「女子学生のスカーフ問題」、「幼児期からのムスリム教育の不在」、「ムスリム教育と独自メソッドの融合」という点に絞られるだろう。特に、ムスリム教育と独自メソッド(訪問したうちの2校でモンテッソーリ教育を実施)との融合に関しては、ムスリム学校に関するこれまでの新聞・雑誌記事や著作などではほとんど触れられていないため、この点は2014年度の研究において大きな収穫となった。また、モスクとの連携による学校の広報活動と生徒獲得に関しても、非常に興味深い知見が得られた。 その一方で、「ムスリム学校」とは言えないが、トルコ出身のイスラーム思想家F.ギュレンに共鳴する人々で成り立つコミュニティ(便宜的にヒズメット運動コミュニティとしておく)によって建設された学校についても本研究課題開始後に知り、ここからムスリム学校だけにとどまらない、イスラームと教育のさまざまな関わり方を観察することができたのは大きな収穫であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のとおり、学校自体の閉鎖や不安定な経営基盤による運営困難、さらに15年1月パリにおけるテロ事件によりムスリムコミュニティが外部に対して非常に警戒しているためか、準備していた調査訪問がキャンセルされるという状況が複数続いたため、調査訪問校数に関してはやや遅れているが、その分各校の個別分析は順調に進捗している。また、モンテッソーリ教育など、当初の仮説ではあまり想定していなかった独自の教育メソッドの採用と実践に着目できた点や、調査訪問した学校において、今後の調査継続を快諾されたり、次回の調査訪問のために別のムスリム学校の紹介を受けられた点は、当初の計画よりもうまく進んでおり、全体としては概ね順調に進展していると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は前年度の進捗状況を踏まえ、すでに関係を構築したムスリム学校およびそこから紹介されるムスリム学校に重点をおいて調査を継続すると同時に、ある程度資料収集が済んでいるユダヤ学校に関して本格的に調査を開始する予定である。 本年度の着眼点は、①ムスリム学校、ユダヤ学校がどのようにして国家教育行政や周辺社会との調和を図っているのか、あるいはどのように独自路線を維持しようとしているのか、②独自の教育メソッド実践とイスラーム教育の融合をどのように図っているのか、③各学校内において、生徒の宗派や出身の相違がどのようにあらわれ、それに対してどのように対応しているか、という3点を主に検討分析する予定である。なお、ユダヤ学校に関してもすでに関係を構築した教育関係者やコミュニティ関係者からの紹介をもとに調査訪問校を選定する予定である。
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