平成29年度も、国立国会図書館を利用して、昭和5年4月から昭和8年12月までの児童虐待問題に関わる新聞記事の収集を行った。これまでの新聞5紙(東京日日新聞、都新聞、国民新聞、萬朝報、報知新聞)に加えて、新たに「時事新報」も対象として、昭和5年4月5月6月9月、昭和8年9月10月の記事収集を終えた。昭和5年4月に岩の坂貰い子殺し事件は発生し社会を大きく賑わしたことがこれまでの調査研究で明らかとなったが、既集の新聞記事に時事新報の記事を加えることで当時の社会の情勢の内実をさらに裏付ける資料を得ることとなった。また昭和8年10月に児童虐待防止法が施行されたが、その当時の社会の動向についてもまた時事新報の記事を得ることによって、さらに多角的に把握することができた。加えて、同時代の新聞広告や新聞案内も収集した。 本科研最終年度として、昭和戦前期の児童虐待防止法関連の新聞記事資料の整理とデータベース化に取り組み、また明治期から昭和戦前期までの児童虐待関連年表の作成を行った。また明治期から昭和戦前期にかけての児童虐待並びに児童保護に関連する論文記事を一覧化し、それらを資料集というかたちで製本化した。研究成果として、日本子ども社会学会第24回大会において、研究報告(「1930 年代の児童虐待問題に浮上する「子ども」の複数性―焦点の定まらない虐待被害者としての児童」)を実施した。また昨年度までの研究成果と今年度の成果を論文にまとめ、それを「昭和戦前期の児童虐待問題と『子ども期の享受』:昭和8年児童虐待防止法の制定に関する構築主義的研究」『教育社会学研究』として公刊するに至った。これまでの調査研究の中間報告として、研究成果報告書を作成した。
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