研究課題/領域番号 |
26780485
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山口 洋典 立命館大学, 共通教育推進機構, 准教授 (90449520)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害復興 / グループ・ダイナミックス / 人間科学 / コミュニケーションデザイン / 経験学習 |
研究実績の概要 |
平成26年度は「被災地と被災地以外のインター・コミュニティ・デザイン」という地域間協働の新たな意義を見いだし、岩手県宮古市、宮城県気仙沼市、福島県福島市と、被災3県でのまちづくりと連携したシチズンシップ教育の展開と、多様な世代の政策形成プロセスへの参加を通じた復興支援と地域活性化の相即モデルに迫った。その結果、David Kolbの「Experiential Learning Model(経験学習の循環過程)」を援用し、4つの過程(doing, feeling, watching, thinking)のそれぞれに対応した生起と継続を確認できた。 それらの知見については、10月の災害復興学会(於:新潟県長岡市)とThe International Society for Integrated Disaster Risk Management (国際総合防災学会、於:カナダ・オンタリオ州)にて事例発表を行った。特にカナダでの学会では多方面からの関心を得ることができ、特に「被災者の遺志を継ぐこと」についてアジア圏の研究者からコメントが寄せられつつ、「教育プログラムとして、プログラム終了後の波及効果にはどのようなものが見られるか」と質問を得た。 また、11月に出版された「ソーシャル・イノベーションが拓く世界」(法律文化社)では、災害復興関連の項目を執筆した。あわせて、幅広い分野の実践的研究において着目されているコミュニティ・デザインについても執筆を担当することとなり、平時における地域内及び地域間の連携・協働のあり方について、文献の渉猟を重ねつつ、整理する機会も得た。 今後は、順調に進められた初年度の動きを適切に整理する。とりわけ、当初に想定したとおりレジリエンスの観点からのモデル化に努めていくこととしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学内の研究助成なども得て、比較的頻繁に現地を訪問し、当事者との対話を重ねる場を持つことができている。それらについて、積極的な研究発表にあたっているが、口頭発表が中心であり、論文へのまとめができていない。これは東日本大震災への復興支援活動が現在進行形で進んでいることもあり、フィールドワークを通じて作成するエスノグラフィーを公刊していく機会が寧ろ遠ざかってしまっていることが要因と考えられる。当事者を研究対象の立場に追いやり、研究者の自己満足として復興を取り扱うことのないよう自戒しつつ、ミクロな支援の現場を広範に伝えるべく、論文等の形態での発表にも精力的にあたることが求められている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度当初に、相次いで2つの国際学会への発表に応募した。日本語では多面的な復興支援活動を知ることができるが、英語では細やかな情報を得ることができていないことを反映しての方策である。当事者と共にあるインター・コミュニティ・デザインの実践的研究として、アクションリサーチの展開過程を丁寧に発表することで、本研究の学術的・実践的意義を適切に示していくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度、学内の研究助成により、国際学会での発表などを対象に支援を得た。そのため、当初よりも支出が抑えられることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究は順調に進められていることから、進展状況と照らし合わせながら、研究対象地でのフィールドワークの回数の調整を行うなどして、適切な執行にあたっていく。また、フィールドワークのみならず、研究発表の旅費等にも充当するなど、効果的な使用に努めることとする。
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